9月28日(ブルームバーグ):東京電力は「ゾンビ企業になる前に破綻処理すべきだ」との考えをみんなの党の渡辺喜美代表が示した。福島第一原子力発電所の賠償金支払いを支援する国の「原子力損害賠償支援機構」は26日に業務を開始した。東電が自力で負担すると債務超過に転落する恐れがある中で、政府の事故・賠償対策を批判する渡辺代表が持論を展開した。
渡辺氏は22日、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで100%減資などの破綻処理をしなければ、東電は「えらくモチベーションの低いゾンビ企業として生きていくことになる」と指摘した。
渡辺氏は「東電を破たん処理すれば、賠償の原資が相当生まれてくる。具体的には負債サイドでは株の100%減資、債権のヘアカット(債務減免)、資産サイドは送発電設備の売却。そういうことをやれば少なくとも5兆円以上は捻出できる」とみている。
現在のスキームでは原子力事業者11社などが出資して設立された原子力損害賠償支援機構が、東電の賠償金支払いを支援する。
渡辺氏は、この手法では「結局政府が小切手を切って機構に渡すので国民の負担、つまり税や料金の値上げで賄われることになる」とし、賠償の支払いが優先的に行われていけば、人件費に回る資金が不足し「ボーナスももらえないような、やる気の出にくい会社になることが目に見えている」と強調した。
そのため「いったん東電をリセットし、送電と発電の分離体制を作って競争環境を整えれば、新たな成長産業がたくさん生まれてくることになる」との考えを示した。そうすることで市場に競争が生まれ、電気料金が下がり日本の経済成長にもプラスにもつながると話した。
渡辺氏は、26日付で経済産業省を退職した古賀茂明氏を例に挙げ、こういった革新的な発想ができる人たちが今の政権にいないため、「日本の衰退に歯止めをかけにくい状況になってきつつある」と危機感を示した。古賀氏は5月に出版した「日本中枢の崩壊」で東電の処理策に触れ、国民負担を減らすために債務の減免や100%減資を実施すべきだと提言していた。